ミュンヘンで、人生の格言に出会った。
2月後半から2週間の「芋修行」。
修行レポートをつづるにあたり、「どこで何した」「何が美味しかった」といった普通の旅の記録はInstagramのストーリーズからでもご確認いただくとして、こちらのブログでは、芋から得た深い学びについてご紹介していきたいと思います。
1.ミュンヘン・ヴィクトゥアーリエン市場の芋
修行初日に向かったのは、ミュンヘン中央駅から徒歩でも行けるヴィクトゥアーリエン市場。
200年以上の歴史がある市場で、野菜や果物、ハーブティー、花、おみやげや日用品まで、修行初日だというのにたくさん買物してしまいそうになる危険なスポット。海が遠いので、魚はあんまりなかったけれど、ソーセージはたくさんありました。
個人的には、アラブ系の人がオリジナル調合したスパイスを何百種類も置いているスパイス屋さん、店主夫婦が自分で狩ってくるという鹿や猪などのジビエに特化したワイルドな肉屋さんなどが面白かったです。
2.じゃがいもも、いっぱいある
もちろん、目当てはじゃがいも。
そして、じゃがいも専門小売という業態が可能なのがドイツである。日本でいえば、味噌屋、酒屋みたいなノリかなぁ。
中でも若者に人気だというのが、写真のカスパー・プラウツ(Caspar Plautz)というお店。
じゃがいものバラ売りコーナーの横に昼間だけ開くカフェが併設されていて、クリエイティブな芋料理がいただける。
オープン前からすでに行列で、開店直前の店内からは試合開始前の野球部みたいな掛け声が聞こえてきた(カッコ内が日本語訳)。
「今日もみんな元気ですか!!」「ヤーヴォール!(エイ!)」
「お客様笑顔にしていきましょう!!!」「ヤーヴォール!(ウェイ!)」
「今日もがんばっていきまっしょーーー!!!!」
「ヤーヴォーーーール!(ッッシェーーーーイ!)」
ちょっと気後れして隣のお店をのぞいてみたのが、今回最初の学びを授かる精神と時の部屋になるとは。
3.人生の学び「芋なしには生きられない」
若くて元気なお兄さんたちのお店の隣に、「じゃがいも売ってます」「やってます」とだけ書かれた看板のある店がある。
この日は寒いからか、じゃがいもは全部店内にあるようで、一見外からは何の店だか分からない。
横にある小さな扉を押してみると、リンゴみたいなつややかなほっぺをしたおじさんがニコニコしていて、「どうぞ」という。
私「あの、私、日本から芋修行に来ました」
おじさん「ようこそ!」
私「芋が好きで、ドイツ語を学びまして」
おじさん「すごいね!」
私「それくらい好きなんです」
おじさん「芋なしには生きられないよね」
そう!芋なしには生きられないのです。おじさんはこうも続けた。
Ein Leben ohne Kartoffeln ist möglich, aber sinnlos.
じゃがいもなしの人生は可能だが、意味がない。
なんだかこれ、心に刺さるなぁと思い、帰国後に調べてみた。
そしたら実は、この言い回しは “ロリオー”という名で親しまれた戦後ドイツを代表するコメディ作家ヴィコ・フォン・ビュローの格言をもじったもので、もともとはこれである。
なぜ「パグ」なのかも、色々深い意味があるらしい。
そしてさらにさかのぼれば、19世紀ドイツの哲学者・ニーチェにもこんな格言がある。
つまり何が言いたいかというと、ドイツでは何かモーレツなものに対する愛を表現する時、二重否定(~でなければ、~ない)をもって全力肯定するということだ。「○○なしには」の「○○」に自分の好きなものを当てはめて愛を表現することはよくあるようで、○○が馬鹿げていればいるほど、より哲学も深まりそうだ。
そんなこんなで、おじさんにお勧めしてもらった2キロの新じゃがを担ぎ、背中を押してもらったような気持ちになった。幸先の良い修行スタートなのでした。
あ、ちなみに「じゃがいもなしの人生は可能だが~」を表紙にしたノートがAmazonなどで入手できます。じゃがいも好きなあの人のプレゼントに最適、日記にしても、職場や学校で使ってもOKだそうです(笑)。
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